2025年6月16日
エクシオグループ株式会社(本社:東京都渋谷区、代表取締役社長:舩橋哲也)は、再生可能エネルギーの利用効率を向上するため、一般的な太陽光発電システムに用いられているパワーコンディショナ(パワコン)に代わり、半導体遮断器とこれを介して接続されるリチウムイオン蓄電池により太陽電池の出力を最大化するパワコンレスシステムを開発し、系統電力と独立して高効率で電気自動車(EV)に充電できるグリッドフリーソーラーカーポートを神奈川県藤沢市のエクシオグループ湘南総合技術センタに構築して実証を開始しました。また並行して、太陽工業株式会社様との共同研究により、カーポートの屋根材として導入が期待される膜構造物へのフレキシブル太陽電池の接着性を評価し、その実用性を確認しました。
■概要
(パワコンレスシステムの特長)
一般的な太陽光発電システムでは、パワコンにより太陽電池の発電状態を検知し、その出力が最大となるように制御していますが、パワコンそのものの損失や消費電力によりシステムの効率が低下するというデメリットがあり、特に日射量の少ない朝・夕や曇天時には発電できない等の課題があります。新たに開発した技術は、発電や蓄電池の充放電の制御を半導体遮断器とこれを介して接続されるリチウムイオン電池により実現するものです。パワコンを使わないため、電力変換器による電力損失がなく低損失、自然空冷、長寿命、低騒音、低電磁ノイズ放射、日射量の少ない朝・夕や曇天時の発電特性の改善といった特長があります。損失が低減されることで、より多くのエネルギーを供給できるようになります。一日に使えるエネルギー量としては、パワコン方式の最大1.4 倍になると予測しております。
本技術の開発では、発電電力の最大化制御の原理や基礎検証については京都工芸繊維大学様、システムの構成については長崎総合科学大学様との共同研究の成果を応用したもので、その成果については、国際会議、IEEE SPEC2024 およびIEEE ICRERA2024 にて発表しています。
(グリッドフリーソーラーカーポートのメリット)
通常のソーラーカーポートは太陽電池の発電電力をパワコンを介して電力系統(グリッド)と連系し、系統電力と合せてEV に充電する方式です。これにより、安定してEV を充電することが可能ですが、系統電力の受電設備やソーラーカーポートとの配線のための土木工事などでコストが高くなるというデメリットがあります。グリッドフリーソーラーカーポートでは、発電した電力をカーポート近傍に設置したリチウムイオン蓄電池に充電し、EV への充電は蓄電池の放電と合せて行います。そのため、系統連系関連の設備や工事が不要となります。EVに安定して充電を行うためには蓄電池の容量を大きくすることが必要でコスト高の原因となりますが、近年リチウムイオン電池の価格は飛躍的に低下しており、将来的にトータル的なコストメリットが期待されます。さらに、この方式では100%地産地消のグリーン電力によるEV走行が可能という大きな魅力があります。
(膜構造物の検討)
膜構造物は設計の自由度が高く、金属部材やコンクリートなどを多く使用する建築物と比較し、軽量で少ない部材で済むだけでなく、ペロブスカイトを始めとするフレキシブル太陽電池モジュールを貼るだけで太陽電池アレイが構成できるため、太陽工業株式会社様との共同研究で、ソーラーカーポートの屋根材としての最適な設置方法を検討しています。今回、ガラス繊維布に塩化ビニル樹脂をコーティングした膜材にシリコン系のフレキシブル太陽電池を接着し、その実用性を確認しました。作成した屋根構造を模擬したモックアップにより耐久性の評価を進めてまいります。
(実証設備)
実証設備はカーポート上に設置した10kWの結晶型シリコンタイプの太陽電池アレイ、375V-72kWhのリチウムイオン蓄電池及び10kWのEV急速充電器2基から構成しています。カーポートの大きさは、普通EV車に加え、EVバケット車やトラックなど2トン車両2台に対応した構造としました。
パワコンレスシステムは複数の半導体遮断器とセンサを組み合わせ、発電電力の最大化制御や蓄電池の充放電制御及び高い安全性を実現しています。また、グリッドフリーシステムは系統電力と自立して動作するため、リチウムイオン蓄電池が完全に放電してしまうと、パワコンレスシステムを制御する電力が無くなってしまい、発電や充放電が制限されてしまいます。これを防止するため制御部に次世代電池を使った小型のバックアップ電源を搭載しています。バックアップ蓄電池には、FDK株式会社様が開発した鉛蓄電池と互換性が高いニッケル亜鉛蓄電池を搭載しました。鉛蓄電池に比べ軽量で、環境負荷が低く、リチウムイオン蓄電池と同じ充電方式で使いやすい特長があります。このニッケル亜鉛電池を使ったバックアップ電源の動作も評価します。
・設置場所 :エクシオグループ湘南総合技術センタ
・仕様 :系統電力独立型自家消費システム
・発電出力 :10kW
・蓄電容量 :70kWh
・EV充電 :10kW x 2
(実証内容)
当社湘南総合技術センタ所有の普通EVの充電装置として利用することにより、基本動作、実用性を確認するとともに、季節による日射、気温の変動に伴う発電や充放電等のデータの取得を行います。特にEVの使い方(走行距離、走行(充電)時間帯、充電頻度)とこれを満足する太陽電池・蓄電池容量の最適化やより使いやすいお客様インタフェースなどの検討を行います。
(今後の展開)
当初搭載する結晶型シリコンタイプ太陽電池で基本特性を評価した後、膜構造物にペロブスカイト太陽電池等のフレキシブル太陽電池を搭載したモジュールへの置換を検討します。
また、当社が多く所有する工事用のバケット車も今後EV化が予想されるため、EVバケット車やEVトラックとその業務内容に必要な仕様も検討していきます。
■共同研究
太陽工業株式会社 様
本社:東京都世田谷区池尻2-33-16
代表取締役社長:能村 祐己
ウェブサイト:https://www.taiyokogyo.co.jp/
■ご協力いただいている皆様
株式会社第一ヒューテック 様
本社:東京都新宿区四谷1-23
代表取締役社長:島谷 聡
ウェブサイト:https://www.hutecc.jp/
株式会社エクシオテック 様
本社:東京都大田区平和島四丁目1番23号
代表取締役社長:浅野 健志
ウェブサイト:https://www.exeo-tech.co.jp/index.html
FDK株式会社 様
本社:東京都港区港南一丁目6番41号
代表取締役社長:長野 良
ウェブサイト:https://www.fdk.co.jp/
京都工芸繊維大学 様
所在地:京都市左京区松ヶ崎橋上町(松ヶ崎キャンパス)
学長:吉本 昌広
ウェブサイト:https://www.kit.ac.jp/
長崎総合科学大学 様
所在地:長崎県長崎市網場町536
学長: 黒川 不二雄
ウェブサイト:https://nias.ac.jp/
【本件に関するお問い合わせ先】
エクシオグループ株式会社 コーポレート・コミュニケーション室 広報担当
TEL:03-5778-1075 E-mail:contact@en2.exeo.co.jp